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資格を取るって本当に大切? ④介護福祉士を受験するにあたって

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介護
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前回の記事「介護の資格ってどこまで必要?」では、資格の定義から現存の資格を捉え直したとき

「介護の資格は取る『必要』はなく、取る『目的』がある場合に取ればいい」

というようなお話をしました。
「何がしたいか」を見失って「こうすべき」という周囲の論理で資格を取るのは危ういですよ、とも。


今回は「それでも資格があった方が良いんじゃない?」と思う方に、介護の仕事のために8つの資格を取った僕が実際にどれだけのものを費やしたのか。

そのエピソードを何回かに分けてお話していきます

勉強漬けの日々

介護福祉士。
介護を生業とする者にとって、それは目指すべき「頂き」だと以前の記事「かけがえのない利用者さんとの思い出 ⑤成長への焦り」でお話ししました。

国がその知識・技術を認めるということは人から信用されるうえでこの上ない指標となります。介護の採用条件も介護福祉士の資格を持っている事が前提の所もあり、この資格の有無は介護という業界で生きていく為には避けて通れないものです。


それだけに、僕も介護業界で働くと決めたときから「介護福祉士」を一つの目標としていました。

派遣社員を辞めて正職員にならずに介護福祉士の試験に挑んだのも、目標として掲げた以上半端な気持ちでは取り組めないという思いからでした。そのため実技試験については講座を受けて免除してもらい、筆記試験一本に絞れるような環境づくりをしました。


国家資格を取るのであれば脇目も振らずに一直線に勉強すべし。
当時の僕はその思いが強く、派遣社員を辞めてからの試験までの三ヶ月ひたすら勉強に明け暮れました。

具体的に言うと、朝8時から昼12時の4時間、夕方16時から18時の2時間が主な勉強時間でした。


目が覚めてすぐに朝食を食べ、直ちに机に向かって勉強。
家の中は静かでしたが、これまでに生活音で集中力が途切れることが度々あったのでお気に入りの音楽を一曲リピートにしてそういったノイズを防いでいました。

「曲を聴きながらのほうが集中力乱れるんじゃない?」と思われるかもしれませんが、曲は掛け始めに自分のテンションを上げた五分後にはもう聞こえなくなっています。曲再生を止めているのではなく、その頃にはもうテキストに集中しているので意識されていないのです。


こうしてがっつり勉強した後、昼の12時から14時までは気分転換を兼ねて昼食と親の買い物送迎に出ていました。

待ち時間が大抵一時間ほどあったのでその間に暗記ブックでひたすら知識を入れ込みます。午前中に程よく精神が仕上がっているので、ここでは集中するまでの音楽を必要としませんでした。

道行く人が本を食い入るようにして読む僕を不審がるときもありましたが、そう観察しながらも本を読み込めるほど周囲を自分の空間として溶け込ませていた感覚になっていました。

買い物が終われば親を家に降ろしてから一人で山登りをしていました。

山登りとはいっても頂上まで三十分ほどでたどり着くような規模の山ですから、新鮮な空気を吸いながら程よく汗をかいて、勉強で火照った頭を休ませていました。

また頂上には神社があって時折お賽銭を入れたり、木々に囲まれた隙間から実家の街並みを見下ろしたりしていました。


子どもの頃通っていた中学校も眼下に広がっており、「まさか自分が介護の道をいくなんて誰一人として思いもよらなかっただろうなぁ」と独りごちる日もありました。

今から十年以上前ですら子どもの頃の自分と変わり過ぎていて、なにか大きな力によって変わるように促されたかのような感覚を覚えたものです。


山を下りて家に帰ってからは風呂掃除をして夕食。
それ以降は自由時間を満喫するか、寝るまでにもう一度勉強するかを日で使い分けていきました。

朝から晩まで介護福祉士の資格勉強をして、時に頭を休めて自分にとって最もやりやすく効率の良い方法で勉強をしていきました。


目まぐるしい三ヶ月間だったことは間違いなく、どこまで勉強しても「足りない」不安で一杯でした。


なにしろ学べば学ぶほど学び足りないことを思い知り、さらに学ばなければならない気持ちになります。そのうえ仕事を辞めてまでして勉強しているわけですから、その年度で合格できなければ何のために周りから惜しまれるほどの職場を辞めたのか、その罪を自分自身に問われます。


日が経つにつれプレッシャーは膨らみ、一秒ごとに追い込まれていきました。


テキストをこなし、問題集を解いて正誤を確認して解答の理由を読み解いていく。
暗記ブックを1ページごとに何度も読み返しては暗記できたかを確認し、三日後にまた進んだ分を読み戻して覚えているかを確認する。
最後の一週間にさらに追い上げて、前日に試験と同じ時間で過去問題を解いていく。


そうしてとことんまで追い込み、追い込まれ、悔いる暇もないほど勉強し続けました。


気を抜けば「あれが足りない」という不安が襲ってくるので、そう思う隙を自分に与えないように勉強をしてきたのです。不安になる時間は勉強が上手くできない時間でもあるので、自分の目の前には常にテキスト、問題集、暗記ブックのいずれかが置いてある状態にしました。

試験当日の過ごし方 ~合格するためには~

前日までとは打って変わり、当日の僕は実に落ち着いていました。
心の中に不安が一切なく、ただ試験が始めるのを待ち遠しく思っていたのです。

親に駅まで送ってもらい、試験会場まで1回の乗り換えで1時間半ほど。
この「移動時間」をどう使うかが合否の分かれ目です。


試験会場に行くまでの間、ほぼすべての受験生がテキストや暗記ブックを食いちぎる勢いで顔面にこすりつけており、また友人と来ているとおぼしき人たちは「試験どうしよう~」という自分の不安を分かち合っていました。

電車内は満員で、冬だというのに玉のような汗が流れる有様でした。


その中でただ一人、僕だけがお気に入りの音楽を聴きながら涼しい顔をしていました。試験会場が終着駅だったこともあり途中30分ほど寝もしました。

時折起きては「まだ着いてないな」と確認して、たまに持参したチョコレートを一粒食べてはまた眠り始めました。


なぜこんなにも落ち着いていられたかと言うと、大学在学中の資格試験での経験が活かされているからです。


前回の記事「資格を取るって本当に大切? ③目的を欠いた資格」でお話ししたように、僕は大学在学中に「福祉住環境コーディネーター2級」「カラーコーディネーター2級」「福祉用具専門相談員」の資格を取っています。

またカラーコーディネーターに至って1級試験を二度受けて二度とも落ちており、資格試験は10回ほど、合格・不合格どちらも合わせて経験していたのです。


並大抵の人よりは「試験慣れ」していたわけですね。


その経験からわかっていたのは「試験当日に勉強すると本番で冷静な判断が出来なくなる」ということでした。


その理由は以下の通りです。

  1. 試験直前まで知識を詰め込むと脳が疲れて本来のパフォーマンスが発揮できない
  2. 直前に詰め込んだ知識と、それまで時間を掛けて学んできたことが反発して正解への自信が失われる
  3. 自分が勉強する姿を見せれば周りも勉強し始めてお互いに焦りを生み出す
  4. 当日に学ぶ程度では得点率は上げられない



これは僕自身の経験則であり、「正しい試験の受け方」とは言い切れません。
しかし経験上、1~4を守るか守らないかでは試験を心地よく受けられるかに大きな差が生まれます。


どれだけ勉強しようとも当日のコンディションを崩してしまえば元も子もなくなってしまいます。


前日になって徹夜漬けで勉強したとしても、十分な睡眠がとれていない脳や身体では満足に考えることすらできません。

その状態では「本当にこれで大丈夫だろうか?」と不安になり、貴重な移動時間を使って知識を詰め込み、さらに脳を弱らせてしまいます。

加えて必死になる自分の姿を周りに見せれば「あの人がこのタイミングでこれだけ必死なんだから自分も頑張らないと!」と周りに勉強させる動機を与えてしまいます。


この調子で、どうやって合格者数が限られている試験に合格できるのでしょうか。

自分を弱らせ相手を強くするこの一連の行為をほとんどの人がやってしまい、全体の得点率を下げてしまうわけです。


であれば、合格したいなら何をすべきか。
それが上に書いた僕の行動で「試験前日までは全力で学び、試験当日は試験のために力を温存する」ことです。


前日までに全力で学び続け、その実力でもって試験を合格する自信へつなげていく。

当日は力を温存するために移動時間は極力休息をとる。

また適時糖分を取って脳へエネルギーを補給してパフォーマンスを維持する。

悠々とする姿を周りに見せて「あの人寝ていられるほど余裕なのか?」と焦りを生む。


そして試験本番では周りのことなど一切気にせず、自分の出した答えに絶対の自信をもち、既定の退出可能時間までに全問解き終わり、丁寧に見直しをしたうえで誰よりも早く退出する。


ここまで出来れば確実に合格できますし、これでなお合格できないのであれば単純に実力不足です。特に介護福祉士のような国家資格は全国に受験者がいますから、並大抵の努力では足りないのです。


もしここまで読んで「このままで大丈夫かな…」と思われたのなら、こう自分に言い聞かせてみてください。


「一日の勉強時間は足りているか。勉強の仕方は自分に合っているか。
 一日を丁寧に積み重ねているか。怠け心に負けてはいないか。

 積み重ねた日々を誇らしく思えるか。誇れるほど努力をしたか。

 不安で眠れない夜はあるか。
 その不安を抱えるほど学んだと言い切れるか。

 言い切れないなら今すぐ本を取れ。勉強しろ。

 こんなことは誰もがやっている。
 誰もが合格したくて同じように震えているのだと思え。

 そして誰よりも飢えてみせろ。
 そう言い聞かせて、誰よりも勉強して―—


 その先で、自分は絶対に合格するのだ」


自分の心と体を整えて万全な状態であってこそ合格はつかみ取れます。
つまるところ、資格試験は「前日まで」でその行方が決まっているのです。

~ つづく ~

【併せて読みたい記事】
想い紡ぐ介護士になるまで
かけがえのない利用者さんとの思い出 ⑤成長への焦り
資格を取るって本当に大切? ③目的を欠いた資格


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