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認知症を受け入れる ~自分の家族が認知症になったら~

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介護
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高齢者介護から離れて8年ほどになりますが、時折「親(家族)の介護のことを教えてほしんだけど」と相談をもらいます。

その中でも多いのが「認知症」についての相談で、相談のたびに学び直してから「こうした方がいいですよ」とお話ししています。


やはり介護の関心事で一番大きいのは「親(家族)の介護」で、その中でも「知らないと苦労するだけではなく心身ともに疲れ切ってしまう」認知症については一度まとめておいた方がいいと思いました。

そのような背景から、今回から数回に分けて「自分の家族が認知症になったら」をテーマに認知症についてお話していきます。

認知症について(おさらい)

前回の記事では認知症の定義と代表的な分類についてお話ししてきました。
簡単にまとめるとこのようになります。

認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態

自分の家族が認知症かどうかの診断や検査は病院や診療所、クリニックで受けられる。もし「かかりつけ医」がいるならまずは相談してみる。

大切なのは自分の家族がどのような認知症で、どう対応するかを家族が心得ておくこと。

(参照:まず認知症を知ろう ~自分の家族が認知症になったら~

このように定義から見直すのは、認知症によって生じる行動(コト)と認知症の方(ヒト)を分けて捉えることで『行動』に焦点をあてるためです。

この「コト」「ヒト」を混同して認知症の方を変えようとすると関係性がこじれてしまい、認知症の症状も悪化しやすくなります。それを避けるために「コト」の解消を考えていくわけですね。

認知症の症状について

認知症の症状を理解するために、まずは認知症の分類を大まかにまとめていきます。

認知症のタイプ               特徴進行速度
アルツハイマー型認知症アミロイドβというタンパク質により脳が委縮(小さく変化する)
日本人の認知症の約60~70%を占める。
とくに記憶をつかさどる海馬が委縮し、もの忘れが生じやすい
経過とともに
血管性認知症脳梗塞などの脳血管の病気の二次障害(きっかけ)として起こる。
障害を受けた脳血管の部位によって症状の出方が違う。
いわゆる「まだらぼけ」状態で、調子に波がある。
ゆるやか
階段状
レビー小体型認知症レビー小体というタンパク質により脳神経細胞が壊れる。
手足の震えや歩行困難などのパーキンソン症状を併発。
もの忘れより、実際にないものが見える幻視が起こりやすい。
波状に上下
徐々に進行
前頭側頭型認知症脳の前頭葉、側頭葉が委縮することで発症。
万引きなど、社会ルールから逸脱した行動を取りやすい。
薬によってある程度症状をコントロールできる。
ゆるやか


また認知症の症状には脳の病気を原因とした「中核症状」と、それによって生じる「周辺症状」があります。

中核症状周辺症状
記憶障害
直前の出来事から忘れてしまい、
くり返し尋ねたり探し物をしたりする
不安・焦燥感、イライラ、暴言・暴力
遂行機能障害
ものごとの手順や段取りがわからなくなり、
買い物や料理ができなくなる
興奮、徘徊、抑うつ状態
失語、失算
失認、失行

言葉、数字、人やモノ、やることがわからなくなり、
会話が続かなくなる
幻視、錯視、睡眠行動異常、意欲低下
見当識障害
時間や場所、人がわからなくなり、
迷子になったり昼夜逆転生活になったりする
夜間行動異常、妄想・幻覚、反社会的行動


脳の病気の種類によりどのような症状が起きるかは変わってきますが、上記を押さえておけば「認知症とはこういうものなんだ」と大まかに理解することが出来ます。

進行速度について知っていれば症状の変化にも対応できるようになりますし、将来の見通しを立てて「今度どうしていくか」の計画も立てやすくなります。


また認知症の診断・検査は病院や診療所、クリニックで行いますが、説明を受ける前にこれらの分類や症状を理解しておくと「家族の身に起きていること」を受け入れやすくなるのです。

認知症を受け入れる

長年ともに過ごしてきた家族の変化、とくに認知症による変化は受け入れがたいものです。


訳もなくイライラしている、自分の名前を思い出せずに「誰だったっけ?」と言われる、うろうろし始める、言葉が荒くなり、暴力的になる…。


このような変化を目の当たりにして「まさか自分の家族がこんなことになるなんて!」とショックを受け、現実として受け入れられなくなることもしばしばあるのです。



施設入所させた後はほとんど面会に来られない家族さんもいて、契約更新のときでさえ「変わり果てた親を見るのは辛いから」とご本人に会おうとしませんでした。

職員としては家族さんに会いたいご本人の気持ちを知っているため「そこをなんとか」と交渉はするのですが、家族さんの気持ちを思えば無理強いもできず、かろうじて電話で声のやり取りをしてもらうくらいでした。


「声を聴くだけでも安心されるのだから姿も見せてほしい」と思い、どう話せば家族さんが面会に来てくれるだろうかと考えるなか、その方が病院へ緊急搬送されたときでした。

幸い大事には至らず入院となり、そこで見舞いに来た家族さんとようやく再会されたそうですが、その時の様子をうかがった際に家族さんが「もう私らが誰かもわからないようだった」と寂しげに話されていたのが印象的でした。



家族が認知症だとわかったときのショックは、やはり大きいものです。


しかしそれが認知症によるものだと理解していれば、「うちの家族も認知症なんだな」と受け入れる心構えができます。

そして目の前で起きる行動についてもその原因が脳にあり、そこから生じる中核症状、周辺症状と一連の流れとして理解することで「そういうものなのだ」と捉えられるようになるのです。

そうして家族から受け入れられることで認知症の家族が受けるストレスも軽減していきますから、ストレスからくる症状が発生しにくくなるのです。


「わかる」ということはそれだけでお互いにとって「救い」になるわけですね。


認知症の大まかな分類と症状、進行速度を理解することで将来の見通しが立ち「うちの家族も認知症なんだな」と受け入れる心構えができる。

認知症の症状は脳の病気を原因とした「中核症状」と、それによって生じる「周辺症状」があり、それらを押さえておくと説明を受ける際に「家族の身に起きていること」を受け入れやすくなる。

さらに知りたくなったら

最後に僕が介護を考えるうえで参考にしている本を紹介します。
どれも「読みやすく、わかりやすい」本ですので、ぜひ手に取ってみてください。



1.『マンガ 介護する人・される人のきもちがわかる本』


「マンガ 介護する人・される人のきもちがわかる本」は、何よりも「マンガ」であることが他の本に比べて圧倒的に読みやすいです。

そのうえ「介護する人・される人」の具体例が優しいタッチで描かれていて、取っ付きやすさNo.1。


「認知症の方の介護は大変なだけではなく心温まるシーンがある」ことを改めて感じさせてもらったありがたい本です。




2.『認知症の親を介護している人の心を守る本 疲れたとき、心が折れそうなときのケース別対処法 』


「認知症の親を介護している人の心を守る本 疲れたとき、心が折れそうなときのケース別対処法」は題名通り、心折れそうなときに「どうしたらいいか」を教えてくれる本です。

文章全体に優しい言葉選びがされており、ついついカッとなってしまう認知症の親の介護をしている人を温かく受け入れてくれます。


この本では「認知症について理解していることがいかに大切か」を学ばせてもらいました。



3.「家族のためのユマニチュード」


「ユマニチュード」とは、簡単に言えば「あなたを大切にしていますよ」というメッセージを「伝わるように伝える」技法です。

そしてその技法を家族介護でどうやって使っていくかを書いたものが「家族のためのユマニチュード」になります。


認知症の家族を介護するにあたり「あなたを大切にしていますよ」というメッセージを「伝わるように伝える」ことは、認知症の症状を引き起こさせないためには欠かせないものです。

それをこの本では家族介助によく見られる場面をイラスト付きで解説してくれますから、はじめて家族の介助をする方でも読みやすく、わかりやすい内容になっています。


認知症の家族を介護する方をはじめ、多くの方に読んでもらいたい本です。

「ユマニチュード」については以前の記事「認知症ケアでお悩みの方へ ~ユマニチュード~」でも触れていますので、併せて読んでもらえると嬉しいです。


【併せて読みたい記事】
認知症ケアでお悩みの方へ ~ユマニチュード~
高齢者介護をして大変だった3つのポイント
まず認知症を知ろう ~自分の家族が認知症になったら~


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