先日、前々から利用してみたいと思っていた「介護・福祉の有償ボランティア」サービス、スケッターを初めて利用しました。
スケッター (https://www.sketter.jp/)
なので今回はスケッターについて
「実際使ってみてどうだったのか」
「スケッターから見える介護の未来」
についてお話ししていきます。
スケッターとは
スケッター(https://www.sketter.jp/)とは、
「無資格でも、未経験でも、すきま時間だけでも。
明日から、あなたもだれかの“助っ人”に。」
をキャッティフレーズに、人手を必要とする介護施設と働きたい人をつなぐマッチングサービスです。
『介護』と言うと、
・食事介助
・入浴介助
・排泄介助
など、専門的な知識や技術、資格が必要だと思うかもしれません。
しかし実際の介護現場では「食事の準備」「お掃除」「レクリエーション」といった専門的なスキルや資格がなくてもお手伝いできる場面がたくさんあります。
「え、本当に?」と思われる方もいるかもしれません。
そこで、少し体験談をお話しします。
僕が以前勤めていた有料老人ホームでは、そうしたお手伝いをしてくださるスタッフさんがいなかったとき、「サービス提供責任者業務」「介護業務」「お掃除」「洗濯」「食事の配膳」「玄関や庭のお手入れ」などを一人でやっていました。
全ての業務を勤務時間内で終えられるはずもなく、あるときは夜勤入りの3時間前に「サービス提供責任者業務」をやり、通常の夜勤をやり、夜勤明けの3時間後まで掃除や洗濯、食事の配膳などをしていたこともありました。
あの時ほど
「せめてお掃除や食事の準備をしてくれる人がいれば、早めに帰って休めたのになぁ」
と思ったことはありませんでした。
こうした無理が祟って心身を患うことになったのは以前お話ししましたので、こちらも併せて読んでいただけると「介護施設でのお手伝い」がどれだけありがたいことか、実感を持っていただけると思います。
どんな体験をしてきたか
今回参加させていただいたのは、名古屋市天白区にある住宅型有料老人ホーム『結の樹天白』さんが募集されていた「【松ぼっくりを拾おう】近所にて散歩と散策!」というレクリエーションでした。
住宅型有料老人ホーム『結の樹天白』HP(https://yuinoki.ltd/)
ゆいのきちゃんねる (YouTube : https://www.youtube.com/@yuinoki_ch779)
介護が好きだと叫びたい_結の樹 (TikTok : https://www.tiktok.com/@_yuinoki0405)
レクの内容は「入居者さんと一緒にクリスマス行事に使用する松ぼっくりを拾いに行く」というもので、専門的な知識や資格がなくともできる内容でした。
流れとしては
①施設へ訪問
②担当者さんより、レクの内容や入居者さんの特徴などの説明を受ける
③入居者さんへご挨拶
④担当者さん、入居者さんと一緒に外出。近場の公園で松ぼっくりを探す
⑤入居者さんの体力・体調に合わせて施設へ戻る
⑥入居者さんをリビングへお連れし、その後は施設見学へ
⑦担当者さんと介護関連の情報交換、雑談等
⑧報酬を受け取り、解散
といった形となりました。
入居者さんも担当者さんも朗らかな方で、終始和気あいあいとしながら松ぼっくり拾いのお手伝いをしてきました。
その時の様子はスケッター内のブログにまとめてありますので、そちらも参考にしてみてください。
スケッターが明らかにする「介護職の専門性」
今回初めてスケッターを利用して感じたのは、
・介護職の専門性とは、専門的な知識と技術に裏付けされた『人間性(総合力)』であること
・介護への敷居の高さは『思い込み』であり、その垣根は『介護職の工夫』で崩せること
・「工夫する介護職」の育成は、介護職一人ひとりを『個(ヒト)』と認めた上で成立すること
総じて「介護は誰にでも『できる』もの」であり、できる環境を創り出すことがこれからの介護の未来を決めていく、ということ。
となります。
転じて多くの介護・福祉現場で不足しているものは
①改善思案(一人ひとりが『自分事』として介護を捉える)
②環境整備(物理的・精神的負荷の軽減、雇用条件の見直し)
③人材育成(マニュアルとビジョンの共有、キャリアプランの提示とフォローアップ)
と言えます。
介護職は、ともすれば仕事の忙しさから「介護は自分たちにしか出来ない」と思い込みがちです。
「これだけ毎日が辛く、給料も少ない中でやっているんだから介護は誰にでもできるものじゃない」と。
詳しくはこちら
しかしスケッターの存在は介護業務を細分化することで介護そのものの敷居を下げられる可能性を示しました。
レクリエーションの多くはボランティアさんで代替可能であり、
掃除、洗濯、食事等も「介護職でなければできないもの」ではありません。
唯一残された「介助」ですら誰にでも行えるものです。
この中で介護職がその専門性を示すのであれば、それぞれに対して専門的な知識や技術を備え、その上で自分という『人間性』を通して生み出すものに責任を負うこととなります。
例えば食事介助では
・誤嚥や服薬忘れなどを起こさせないように見守りしながら摂取量、種類、ペースなどをチェックして健康状態を図る→専門的知識や技術
・「あなたがいるから安心して食べられる」と言われる→人間性
と分けられ、専門性をもつ介護職ならば両方を兼ね備えている必要があるのです。
スケッターから見える介護職の未来
スケッターなどの有償ボランティアの台頭は「介護職とは何か」という哲学的な問いになり、それはやがて介護職を国の財源で養う意義にも関わるものとなるでしょう。
国はすでに介護人材不足から『介護助手』を広く募集して介護人材を確保しようと動き出しています。
介護助手は、介護職員との業務分担により、身体介護等の専門的な業務以外の周辺業務を担う職種。
三重県 介護助手の導入支援について – 厚生労働省
介護職場における機能分化を促すことで労働環境を改善し、介護職の離職を防止する
また介護ロボット等テクノロジーも介護ニーズの多様化によって確実に発展・普及し始めています。
詳しくはこちら
こうした『介護の多様化』の流れの中で介護職がその専門性・有用性を示せなくなれば、自ずと「職としての存在意義」も薄れ、介護職に回す費用も別のものへと置き換えられることとなるでしょう。
スケッターによって介護の敷居が低くなり、誰でも自分のできる中で介護に関われるようになると、介護職は
・専門性と人間性を併せ持つ『総合職』としての介護職
・介護助手や有償ボランティア
この二つへと二極化していくことが予想されます。
今は両者の間に「専門性か人間性のいずれかを得意とする介護職」が大勢いて、どうにか介護現場を守り続けている状態です。
しかし専門性はやがて介護ロボット等テクノロジーが代替していき、人間性は介護助手や有償ボランティアが受け持つこととなるでしょう。
この流れは介護に悩む多くの人々を救う明るい未来となる一方で、現状の介護職には「あなたは介護職であり続けられるか」を問う試練にもなりうるのです。
スケッターは介護職をも救うサービス
この『介護の未来』の中で、スケッターは広く介護職を救うサービスになるものと考えます。
なぜなら
・介護の敷居を下げることで「介護をしてみたいけど」という潜在的な介護人材を確保できる
・スケッターを通して施設の雰囲気を知ることができ、入職のハードルが下げられる
・同様に、雇用側も入職前に人物像が把握でき、雇用への負担を下げられる
・職を失った介護職の一時的な雇用を生み、次の雇用へとつなげられる
・他に本業を持つ人が、一時的に介護を副業にできる
といった利点が挙げられるからです。
スケッターが広まることで、現介護職の「これだけ毎日が辛く、給料も少ない中でやっている」という負担を軽減できるだけでなく、介護職自身が一念発起して介護から離れた後でも「一旦働いて食いつなぐことができる場」が提供されるようになります。
そして何より、多くの人が介護現場に入ることで『介護職』が社会にとってどれだけ大切な存在なのかを自分の経験から理解するようになること。
そこから生まれる尊敬の念と感謝こそが、介護職を心身ともに「たすけ、まもる(介護する)」こと。
スケッターから見える介護の未来とは、「『お互い様』になる介護」の姿なのです。
介護ブログの他にも、介護ニュース等などを取り上げるnote、読書にまつわるアメーバブログを運営しております。
また僕が介護を考えるうえで参考になった書籍を紹介しますので、よかったら一度読んでみてください。
本からの学びは揺るぎない自信へとつながっていきます。
介護を自分の「感情」頼りにするのではなく、知識や経験に裏付けられた「事実」と併せて行うことで、介護はすべての人を豊かにしていくことができるのです。
一緒に学んでいきましょう。
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