2022年12月10日より、スマート介護士資格公式テキストが三訂版へと刷新されました。
デジタル化する社会において、デジタル技術を利活用した科学的な介護を推奨する人材が求められる中、スマート介護士資格は今後さらに注目を浴びることが予想されます。
今回はスマート介護士資格を取得するのに欠かせない公式テキストがどのように変わったか、その違いを
・ケアテック関連の充実
・介護ICT
・科学的介護
の3点から大まかな概要や変更点についてお話ししていくとともに、すべての介護士が先んじてスマート介護士を目指した方が良い理由をお話ししていきます。
ぜひ最後までご覧ください。
ケアテック関連の充実
ケアテックとは「介護現場におけるテクノロジー」であり、介護ロボットやICT(情報通信技術)などを介護現場で複合的に用いることを言います。
介護が必要となる要介護者の増加とそれに伴う介護人材不足が懸念される現状では、介護業務を効率化し、質の高いサービスを提供することが必要となります。そのような課題に対してケアテックを用いることが解決への方向性の一つとなります。
それだけにスマート介護士にはケアテックに対する理解が欠かせず、三訂版では特に
・介護ロボットの導入についての実態調査(介護保険サービス系別)
・紹介される介護ロボット数の増加
・介護ロボット導入事例
この3点が充実しています。
例えば移乗介助で用いられる介護ロボット「マッスルスーツevery」では、
【二訂版】
・動作を補助し、介助の際の負担を軽減するウェアラブルロボット。電力を使わず最大25.5kgfほどの補助力があるのでさまざまな業務で使用できます。
【三訂版】
・圧縮空気を用いた人工筋肉で、介護者の腰に大きな負担がかかる動きを補助します。訪問入浴介助時のベッド・浴槽間での移動介助などで使用することが想定されます。車椅子への移乗介助やオムツ交換、着替えの補助など介護現場の様々な場面で活用されています。
このように具体的に使用する場面が明記され、導入を検討する際の知識として使用されることが想定された内容へと変化しています。
介護ICT
介護ICTとは「介護事業所や介護職員にとって有益なICTの総称」であり、介護報酬の請求業務やケアプラン・介護記録などを管理する「介護ソフト」や職員同士や多職種間の情報連携に利用する「ビジネスチャット」などを指します。
二訂版において介護ICTはその文言がなく、第6章の「介護業務支援システムの導入」内のSCOP(Smart Care Operating Platform/介護業務支援システム)が介護ICTの具体例に当たる、と言えます。
三訂版で取り扱う介護ICTでは
・介護ソフト(+介護ソフト以外)
・デバイス
・セキュリティ
・ネットワーク化
などについて詳しく解説がされています。
介護ICTの導入は「介護職員の業務改善」「利用者のQOL向上」「他職種連携の推進」「職場コミュニケーションの円滑化」「コスト削減」といったメリットが挙げられることから、「導入する・しない」によって施設間格差が大きく開いていくこととなります。
このような背景からもスマート介護士が今後介護現場で欠かせない存在となることが見えてきますね。
科学的介護
科学的介護とは「エビデンス(根拠)に基づく介護サービス」の実践です。
これは提供している介護サービスの内容が「高齢者の尊厳保持」と「自立支援」の観点から、経験値のみに頼らない客観的かつ定量的な根拠に基づいて行われることが求められるようになった、という背景に由来します。
主観的な「思い込み」介護から、客観的な「思いやり」介護への転換が行われるようになったとも言えます。
二訂版には科学的介護の記述がなく、三訂版から加えられた内容となります。そして「科学的介護」のみで1章分を用いられていることから、その重要性を窺い知ることができます。
スマート介護士における科学的介護は、厚生労働省の「科学的介護情報システム(LIFE)」を導入し、介護データの蓄積と活用を現場レベルで実践することを目的とした内容となります。
例えば今まで現場感覚によって「大体これくらいの距離を歩行訓練としてやっていけばいいだろう」と定められていたものが、今後は蓄積された介護データから「似たような身体状況の人は、週3回のリハビリによって歩行能力を維持できている」といったように、過去の定量的なデータが知見となって利用者に合った有効な手段を講じることができるようになります。
こうなるとその介護に対して「実際に効果があったのか」の評価を下せるようになるため、利用者のQOLが上げられているかどうか、自立に向かって支援できているかが客観的に判断されます。
形ばかりの訓練ではなく、実際の効果を測る訓練が実施されることで介護サービスの質が向上するわけですね。
そして今後、介護報酬加算も科学的介護にその比重が偏っていくことが予想されますから、現場レベルで科学的介護を理解し活用できるスマート介護士の存在はますます大きくなっていくことでしょう。
先んじてスマート介護士になった方が良い理由
今回はスマート介護士資格公式テキストの二訂版と三訂版の違いをお話ししてきました。
それぞれの詳しい内容については実際にテキストを購入してご確認していただくとして、三訂版スマート介護士資格公式テキストはこれからの介護を学ぶ上で欠かせない情報を網羅していると言えます。
それだけに
①現在介護の仕事をされている方
②介護福祉士資格を修得し終えた方
③二訂版スマート介護士資格公式テキストで勉強された方
この①〜③に当てはまる方は遅かれ早かれ三訂版の内容を何かしらの形で学んで現場で実践することになるため、早めに読んで学んでおいた方が良いでしょう。
そしてもしスマート介護士資格を持たれていないのであれば、これを機にスマート介護士資格を目指してみることをお勧めします。
スマート介護士公式サイト(https://sfri.jp/smartcaregiver/)
今後、国の大きなビジョンとして「人間中心社会(Society5.0)」が構想されています。
これは「狩猟社会(Society1.0)」「農耕社会(Society2.0)」「工業社会(Society3.0)」「情報社会(Society4.0)」に続く、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の解決を両立する、人間中心の社会を指すものです。
この社会において、介護は膨大な介護データに基づく科学的介護の実践を確実に求められます。その中で求められる介護人材像とは、科学的介護を理解し、現場レベルで実践できる介護人材に他なりません。
そうした背景から、先んじてスマート介護士資格を取得することで介護人材としての希少性を高められます。また介護現場に介護ロボット等テクノロジーを導入することで利用者のQOLを向上させ、業務負担も軽減させることもできます。
介護士を目指す全ての人にとって、三訂版スマート介護士資格公式テキストの内容を理解すること。
あるいはスマート介護士になること。
ケアテックや介護ICT、科学的介護が普及するにつれ、その必要性が実感できるようになるでしょう。
その時、周りと同じように「そんな時代になったんだなぁ」と感心するばかりなのか、それとも皆の前で介護ロボットや介護ICTについて説明して評価される介護士となるのか。
「今」がその分かれ目です。
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